最近、介護施設でもICT化が進んでいます。 タブレットでの記録、見守りセンサー、インカムの導入——。「これで業務負担が減り、介護の現場が楽になる」と期待された方も多いのではないでしょうか。
ですが、実際の現場から聞こえてくるのは「かえって仕事が増えた」「前より疲れる」という悲鳴です。 タブレットに入力したデータをわざわざ印刷して紙で回覧し、鳴り止まないセンサーの誤報に走り回る日々。便利になるはずのツールに、私たちが振り回されてはいないでしょうか。
最新機器を入れた現場で起きている現実
なくならない「紙」と終わらない二重管理
タブレットやPCでの記録システムは入った。でも、リーダーや経営陣に提出する大事な報告書は「すべて紙ベース」。 結局、タブレットに入力した内容をわざわざ印刷し、ファイルに綴じ、確認印をもらうために回覧する。これではICT化ではなく、ただの「二重管理」です。「紙じゃないと安心できない」という上層部の意識が変わらない限り、現場の負担は導入前より増える一方です。
「ITリテラシー格差」を現場の自己責任にする無理
介護職員は「ケアのプロ」であって「ITの専門家」ではありません。
スマホすら連絡用以外は不慣れな職員も多い中、分厚い公式マニュアルを渡され、1〜2回の説明会だけで「今日からこれで記録してください」と実務に投入されます。
入力に手間取って利用者のそばにいられる時間が減る焦りや、「壊したらどうしよう」という恐怖心から、現場が拒絶反応を示すのは当然です。
見守りロボットが「高いだけのブザー」の現実
睡眠リズムの解析やバイタル測定、離床予測といった高度な機能があるにもかかわらず、現場では「画面のデータなんて誰も見ず、アラートが鳴ったら走るだけ」。
結局は従来のマットセンサーと同じ使い方しかできず、毛布のズレによる誤報対応やバッテリー管理といった「機器の管理という新しい雑務」が上乗せされています。さらに「何かあったら怖い」と定時巡回もやめられないため、訪室の手間は倍増しています。
導入して終わりの本部・経営陣の丸投げ
現場が使いこなせない最大の理由は、現場のスキル不足ではなく本部や経営陣の「丸投げ姿勢」にあります。補助金を活用して最新機器を契約し、対外的に「ICT先進施設」とアピールして満足する本部。その後の運用設計やフォローはすべて現場任せです。 「紙の廃止」や「巡回基準の緩和」といった、施設公式のルール変更を上が決断しないため、現場は古いルールと新しいツールの狭間で板挟みになっています。
リフト・福祉用具が使われず放置になる現実
腰痛予防のために導入された移乗リフト。「機器を取りに行く時間がもったいない」と敬遠され、フロアの隅でホコリを被っています。使い方を十分に練習する時間も取れず、過密な業務に追われて「結局、力技で抱え上げる」という昔ながらのやり方に戻ってしまうのです。
本当にこのままでいいのでしょうか。
他部署とのやり取りはpc上ですべて行い、画面上で睡眠・バイタル安定が確認できれば、定時訪室は省略するや「丁寧に長文を書くこと」を評価する文化をやめ、「必要最小限の情報をいかに早く残し、ケアに戻るか」を組織の共通認識にすることが大切なのではないでしょうか。
介護における効率化は、決して「手抜き」や「悪」ではありません。効率化の真の目的は、スピードアップして作業件数をこなすことではなく、機械や道具に任せられる作業を手放し、職員の心身を守りながら、人にしかできない温かいケアを取り戻すことにあります。
今後は現場の運用見直しにとどまらず、施設全体のインフラ整備も進め、管理職が毎月頭を抱えている勤務表の作成をAIなどで自動化して業務の軽減や時間を確保すること。必要な福祉用具を取りに行く手間をなくすためにスライディングシートやボードといったものは居室に必要な数を常備すること、職員は統一したリフトや福祉用具の使用方法を実践し利用者の身体状況に応じて適切な場所と対象に絞って使い分けることが大切なのではないでしょうか。
デジタルに弱いからといってその人に責任を取らせるのではなく、使い方の勉強会を開くや音声入力での記録など個々のせいから定型文のワンタップ入力や音声入力の導入や介助直後にその場で短時間で記録を終わらせる仕組みへと移行しなければなりません。
さらには立ち上がり時のブレーキかけ忘れによる転倒事故を防ぎ見守りの心理的負担を大幅に減らす自動ブレーキ型車いすの導入なども視野に入ってきます。
これからは単に補助金があるから「導入する」こと自体を目的にするのではなく、導入後にどのような効率化を実現できるのか。を組織全体でしっかりと考えていく必要があり、適切な使い道を定めなければ活かすことはできません。道具の導入を一過性のイベントで終わらせず、現場が本当に楽になるための引き算と環境整備をやり切って初めて、ロボットや最新技術などが生かしていけるのではないでしょうか。

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